クワ(2)

　【桑】　昔、日本で絹織物業が盛んだったころ、蚕の餌となる桑の畑どこにでもがあった。絹の生産が減少するに伴って桑畑を見る機会も減ってしまった。それでも、昔の桑畑の名残だろうか、あるいは雑木としてもともと林にはあったのか、時折、クワの木を見かけることがある。
　花は四月の終わり頃だが、実は梅雨の頃で、はじめは赤いくやがて熟すと黒紫色になり、甘く美味しい。
　小学校に上がる前、私は茨城県の田舎に住んでいた。熟した実は小さな子供に格好のおやつだったのだが、その頃疫痢が流行っていて、母親から桑の実を食べることを禁じられていた。それでも誘惑は強く、ひそかに実を集めて食べたものだ。ただ、これは簡単に露見してしまった。黒紫色の桑の実を食べると唇が真っ青に着色してしまったのだ。（熱海）
　

　クワ科サクワ属

　 Morus bombycis

　全国